断熱性能 総まとめ

今日は断熱性能解説シリーズの7回目、1回~6回の総まとめをお話します。
前6回では断熱性能解説、断熱性能と室温の関係、断熱性能と健康性の関係、断熱性能と冷暖房費の関係、断熱性能と工事費についてお話してきました。上の表は今までお話してきた事柄を1枚にまとめたものです。
断熱性能を上げるごとに暖房室と非暖房室の温度差が小さく、また前夜から明朝までの温度低下も小さくなります。それに加え年間冷暖房費も減少します。上の表で示した連暖房費は太陽方位や高度、さらに通風方向などに配慮した窓位置や大きさなど省エネ設計を取り入れた時の金額であり、省エネ設計を行わない場合は上の表に1.5万円を加えた額程度となります。また表の下グラフに示すように断熱性能が上がると住居者の健康性も向上することが分かっています。

上の表に示していない断熱性能と建設コストの関係は、平成11年告示(次世代省エネ基準)を基準としてQ値2.1で30万円UP、Q値1.5では80万円UP程度となります。居室の室温を20℃とすると、廊下や脱衣室などの非暖房室が15℃じゃ寒いよね。朝起きたときは最低15℃くらいをキープしたよね。と考えればおのずと必要な断熱性能が見えてくるでしょう。国の基準だからいいだろうと考え平成11年告示(次世代省エネ基準)の断熱性能で省エネ設計にも取り組んでいない住宅の年間冷暖房費は5万円となります。省エネ設計のQ値2.1住宅なら年間2.5万円、省エネ設計のQ値1.5住宅では年間2万円です。建設時のイニシャルコスト増をQ値2.1住宅では12年で回収できますよね。さらに空調機の交換費用まで考慮するとQ値1.5住宅なら年間5万円のランニングコスト減となるので、建設時のイニシャルコスト増分を16年で回収できるのです。
以上のことから快適性・健康性・経済性の観点から最もお勧めしたい性能はQ値1.5W/m2です。断熱性能をさらに高めれば快適性は向上しますがイニシャルコストとランニングコストのバランスが悪くなり過剰投資となります。またQ値1.5とすることで日射熱だけで快適域を維持できる無暖房住宅化も可能となります。必要な断熱性能(快適性・健康性・経済性)を設定し、その性能を確保できるようプランや造形デザインを整えることで未来に残る長寿命の住宅となることを認識してください。

いままでお話しした内容は東京や神奈川の比較的温暖な地域を想定したものです。同じ地域でも沿岸部と内陸部では2℃程度の温度差がありますし寒冷地や温暖地では事情が変わります。建設する敷地ごとに温度環境が違いますし太陽方位や日射量も違います。ですので敷地ごとに計算で必要な性能を確認する必要があるのです。パッシブデザインに絶対解はありません。地道な作業が不可欠なのです。

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