築100年の古民家再生 漆黒の天井

私の幼少期、母方の田舎が山形にありました。農業を営みながら紙すきなどしていたその田舎の住宅は築200年という古民家でした。玄関を入ると大きな土の土間があり、土間から一段上がった囲炉裏のあるスペース、そして奥に寝室という典型的な田の字民家です。屋根はその地域でも少なくなった茅葺屋根で便所は別棟に設けられていたので雪の日でも一度外へ出なくてはいけないという古民家です。
幼稚園の年少さんの年齢になった私は土間の漆黒の小屋裏が恐ろしくて中に入るのを嫌がったそうです。昔の民家は板の間に上には天井は張っていても土間の上には天井を張らず高い小屋裏がそのまま現しとなっていたものです。100年も経つと囲炉裏の煤が小屋裏にこびりつき、どこまでが天井が判別できないほどの漆黒の世界が広がってきます。梁や屋根垂木にこびりついた煤が消臭や防虫効果を発揮していたとも言われていますが、幼い子供にとっては恐ろしく感じたのでしょう。
この山形の民家の記憶は私の心に深く刻まれ現在の古民家の仕事に繋がっています。写真は「築100年の古民家再生」プロジェクトの寝室天井です。天井に濃茶の和紙を張り照明で柔らかく照らしすようデザインしました。宙に走る梁とともに自分の幼いころの記憶を思い出させてくれました。今週末には建て主様と一緒に床フローリングのクリア塗装を行い今月末にお引越し予定です。

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