日本の英知を集結した換気シンポジウム

昨日は「2020年を見据えて住宅の換気を考えるシンポジウム」に出席してきました。基調講演では換気に関する日本の英知が集結したような方々による発表があり、第二部では住宅技術評論家の南雄三氏をコーディネーターに迎えたパネルディスカッションが行われました。基調講演を行った4名のお話を要約して紹介します。

(1)北海道科学大学 工学部 建築学科 教授 福島 明先生
基準法で義務付けられている換気回数0.5回を達成している住宅は全体の13%しかない。56%は換気回数0~0.2回というのが現状だ。その理由は、24時間換気扇のスイッチを切る、換気ガラリの目詰まり、換気ダクトの設計・施工不備などによる。機械換気では換気扇をメンテナンスを考慮して常に稼働してもらう対策が特に重要である。
省エネルギー基準では気密性能の基準を設定しないまま隙間換気量と衛生上必要な必要換気量が曖昧な状態で機械換気量を設定しているが本当にそれでいいのだろうか?

ホルムアルデヒド等のシックハウス原因となる物質は室温が1度上がるごとに1.12~1.13倍濃度が上がり、室温が28℃以上となる夏季に大きな問題となる。逆に言うと冬季は必要換気量を下げても問題ない。24時間換気の他の機械換気(レンジ排気、サニタリー排気、玄関ドアの開閉など)により45m3/h(0.15回/h)分の換気量がある。C値1.0でも自然回帰回数が0.1~0.15回/h程度あるのだから、24時間機械換気量は0.3回で十分なのではないか。

(2)高知工科大学 システム工学群 准教授 田島 昌樹先生
人間が生活し呼吸することにより、一人当たり20L/h(4000ppm)の二酸化炭素を排出する。建築基準法で定められた必要換気量は住宅では20m3/h人であるが、屋外の空気温泉がが進み外気二酸化炭素濃度が450ppmとなっている現状からビル管理法で定めれたら二酸化炭素許容濃度1000ppm以下となるような換気量を計算し直すと、必要換気量は37m3/hとなる。さらに体格が大きくなった現代日本人のCO2呼出量から必要換気量を計算すると55m3/h・人となる。
設計時の換気量が実際に確保されているかどうかを確認することは極めて困難である。居住者の健康と安全から最も簡単な方法は二酸化炭素濃度の測定だ。二酸化炭素濃度は検出しやすく計測器も安価で常に監視しやすい。二酸化炭素濃度を監視することによりシックハウス原因となる物質濃度も安全であることを確認できる。

省エネルギー基準で定められている換気扇の比消費電力(W/(m3/h))は0.30だ。比消費電力を削減する有効な方法はダクト管径を太くすること。ダクト径と圧力損失の関係は50mm管を100とすると75mm管で19.8、100mm管で6.3となる。第三種換気の場合、75mm管DCモーターの比消費電力は0.14、ACモーターでは0.24となる。第一種換気熱交換型換気の場合、50mm管の比消費電力が0.70なのに対し、75mm管DCモーターで0.32、75mm管ACモーターで0.49に削減できる。

(3)国立保健医療科学院 建築施設管理研究 統括研究官 林基哉先生
2003年にシックハウス対策として24時間換気が義務付けられた。シックハウス原因の一つであるホルムアルデヒドの許容濃度は0.08ppmであるが、住宅の実態調査において2005年の新築住宅ホルムアルデヒド濃度は0.025ppm程度と許容濃度をかなり下回っている。

にも関わらず2004年の新築住宅の体調変化率が2000年の12%から18%へと上昇している。断熱化と換気行動の実態調査によると次世代省エネ基準の断熱性能で建築された住宅の50%で24時間換気扇のスイッチを切っている。これらのことから、ホルムアルデヒド等の濃度が減少したのは換気によるものではなく建材からのシックハウス対象物質の発生量が減少したことによると考えられる。

そしてカビやダニなどによる健康被害が増している。カビ・ダニ等の増加は第三種換気により床下や壁内の空気が流入し室内を汚染している、換気扇のスイッチを切って換気量が不足している、高断熱高気密化による空気浄化能力の現象などが考えられるが明確な原因特定に至っていない。換気と空気汚染、健康影響との関係は今後の研究課題である。

(4)国土交通省 国土技術政策総合研究所 建築研究部長 澤地 孝男先生
住宅の平成25年省エネルギー基準と換気システムでは二つの尺度がある。一つは1次エネルギー消費量、二つ目は外皮性能(UA値とηA値)。
換気に関しては換気エネルギーの算定方法を示しており、換気方法とダクト径の違いによる比消費電力の簡易換算値も算出している。計算による方法が面倒という方は換算表を使えばよい。
また今後の課題として、換気扇のメンテナンスに関する指針を策定中である。

(5)パネルディスカッション
シンポジウムでおおなわれるパネルディスカッションとは異なり、昨日のシンポジウムでは1時間10分といる長時間のディスカッションが行われた。ディスカッションの内容を要約しておく

・換気量を測る最も簡単な方法はCO2濃度の測定
・次世代省エネ基準の自然換気方法は窓を開けて行う換気ではなく、換気の経路や流量を計算で確認するパッシブ換気等を示す。シックハウス対策換気の換気扇を設置しなくてもいい例外規定(隙間相当面積15cm2/m2、または真壁作り)とは違う。

・シックハウス対策の常時換気規定では隙間相当面積に応じて冬季の換気回数を緩和できる規定がある。
2cm2/m2以下の住宅で0.1回緩和で0.4回/h、2cm2/m2以上の住宅で0.2回緩和で0.3回/hの換気回数でよいというものだ。隙間が多いと温度差と風圧による自然換気量が増すから機械換気量を減らしてもよいという考えだ。

・二酸化炭素濃度1000ppmという数値は二酸化炭素による健康被害から決められたものではなく、それくらいの空気質なら他の様々な物質からの健康被害の影響もないだろうということから定めれている。二酸化炭素濃度を1000ppm以下とするには55m3/h・人の換気量が必要なのかもしれないが、二酸化炭素濃度単独の健康被害許容濃度は3500ppmなので、55m3/h・人までの換気量は必要ないだろう。

・諸外国の基準などから総合的に判断して0.5回/hの換気量が妥当だろう。その換気量を機械だけに頼るのか自然換気もトータルで考えるかは今度の課題。
・風呂の必要換気量は30m3/h、トイレは20m2/h、納戸は15m3/h、これらの基準もカビが生えにくい素材の使用や脱臭装置付便器の使用など状況が変われば変化する。換気は奥が深い。
・二酸化炭素濃度を常時測定して換気量調整するデマンドコントロールなどの研究を今後進めるべき。

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