無臭もしくは良い香りのする材料を用いるー快適な室内環境ーバウビオロギー25の指針
動物の世界では、嗅覚はいろいろな役割を果たしています。敵の臭いをかぎつける、エサを見つける、仲間を認識する、巣に帰るなどです。人間の嗅覚はそれほど鍛えられてはいない、または外的要因により動物ほどに嗅覚から得る情報は少ないです。外的要因とは、喫煙、飲酒、家具やカーペットの化学物質から揮発する臭い、薬害、有害な室内環境による頻繁な風邪などがその要因です。
では快適な室内環境を考えるうえで「匂い・臭い」は無視してもいいかというと、そうではありません。人間の嗅覚は鈍感で、いい匂いだな、あるいは不快な臭いだな、と感じても一定時間でその「匂い・臭い」は感じなくなってしまいます。感じないといっても脳の中では「匂い・臭い」をつねに感じ取っていて身体に影響を及ぼしているのです。鈍感というより日常生活を送るために備わった能力かもしれません。
もう少し具体的に考えてみましょう。不快な臭いは人間を病気にするのでしょうか?
はい、有害物質ではなくとも心を通じて身体に影響を及ぼし病気になることがあります。なぜなら人間の嗅覚は不安と感情に対して、直接、脳につながっているからです。それはまた、潜在意識を通して働きかけ、古い体験や気分を呼び覚まします。不快な臭いがあると、不快感、刺激、入眠困難、集中力低下、頭痛、吐き気などの嫌悪感につながっていくのです。しかし良い匂いは人生の喜びを高めます。
私たちの気分状態は、私たちが思っているよりもはるかに、匂いの影響を強く受けています。
住まいは「香りの履歴書」を持っています。
親戚や友人の家を訪れたときにその家独特の「匂い・臭い」を感じたという経験をお持ちの方は多いことでしょう。30年ほど前までの日本の住居では、子供の頃の一番のいい思い出は、台所に関係していることが多かったです。台所は五感がのびのびと成長する場であり、人生が、居心地のよさが、ぬくもりが、色彩が、安らぎが、人とのつながりが、そして感覚を味わう場でした。昭和のホームドラマやサザエさんを見ていると、台所で食事を作っている母と旦那さんや子供がその日の出来事や悩み事を相談するシーンがありますね。
過剰に衛生的で、殺菌されたなめらかな表面で覆われた台所では、私たちの五感の成長は妨げられ、台所は食事の準備を仕事のようにこなすことに絞られてしまようにに感じます。
ーヒントー
より良い匂いのためにできることをいくつか書き出します。
※適切に換気する
※室内の相対湿度をどちらかと言えば低めに
※汚染物質やカビを回避する
※調湿性建材を使う:天然繊維のジュータンや建材、石灰や土の商品、無処理の木材
※無臭の(タイル、天然石)あるいは心地良く匂う(木材、天然樹脂油、ワックス)を使う
※悪臭を長期間、強く臭う香料、芳香剤で覆い隠そうとはしない
嗅覚はいい意味でも悪い意味でもすぐに「匂い・臭い」に慣れるので、毒性濃度に達するまで無意識のうちに容量を増やすことがあります。住まいの空気が新鮮で無害であるかどうかを評価するとき、匂いだけに頼ることはできません。臭気限界以下であっても有害もしくは無臭の有害物質が存在するからです。
BIJバウビオローゲ 森健一郎
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