断熱性能と早朝室温、工事費の関係

事務所の標準仕様検討のため断熱性能別の住環境性能と工事費の関係について、室温シミュレーションソフトと設計見積りで比較を行いました。一般の多々にとっても有益な情報かと思いブログに公開いたします。

当事務所の現在の標準仕様はUa値0.40前後、HAET20のG2基準よりやや高いという仕様としています。一日4時間以上の日射取得が可能な敷地であれば現在の仕様でも問題ないのですが、都市部で日射取得が難しい敷地ではもう少し断熱性能を上げたいということが良くあります。どこまで断熱性能を上げるか検討ための参考資料とするため、断熱性能別の住環境性能とイニシャルコストを試算しました。今後、性能別の年間暖房費についても試算していく予定です。

今日は、断熱性能別の住環境性能とイニシャルコストの関係について解説します。

設定条件

シミュレーションする、あるいは結果を見る上でとても大切なのは設定条件です。今回は下の設定条件で行った検討結果ですのでご注意ください

・地域区分:6地域のなかでも比較的温暖な地域(東京)
・暖房方法:部分間欠暖房、室温20℃設定、夜間は空調稼働しない
・間取り :廊下を作らず、共用部から水回りや個室へ直接入室できるオープンなプラン
・家族構成:4人家族、専業主婦または主夫で家に居る時間は長い
・外気温 :最低気温2℃

住環境性能

住環境性能は、前日夜に暖房を切りった翌朝の室温をシミュレーションしました。Ua値が0.46→0.41→0.38→0.32→0.30→0.28へと上がると、早朝室温が、15.7℃→16.2℃→16.5℃→17.1→17.6℃→18.3℃と、室温低下が小さくなっていくことが分かります。


※在宅時間が長く在宅中はつねに暖房している家庭、最低外気温2℃設定のシミュレーションです。外気温が下がったり、夫婦共働きで日中は暖房稼働していない家庭の早朝室温は下がる結果となります。計画中の住宅の早朝室温を知りたい方は下の「室温シミュレーション」からお申込みください。建設地の気象条件、家族構成、暖房方法からご家庭ごとのシミュレーションが可能です。

早朝の室温は高いほうがいいですよね?

と聞かれたら多くの人は「高いほうがいい」と答えることでしょう。

では住環境性能UPに対して、工事費UPは幾らまで許容できますか?
と聞かれたらどうでしょう。幾ら工事費UPするか分からんし、年間暖房費が幾ら下がるかも分からん、・・・答えに困ることでしょう。

また今回の設定条件は外気最低気温2℃としましたが、外気温が0℃以下となる年間10日間を基準に考えるとしたらどうなるか。外気温が低下すると温度低下分がシミュレーション結果から単純に下がります。
つまり、Ua値0.46の住宅であれば早朝室温15.7℃→13.7℃程度となります。

極寒の日を基準に考えてもっと断熱性能を上げたい、あるいは年間10日間程度なら暖房機をリモコン起動させて起きる1時間前に暖房をかけておけばいい、考え方は人によって変わることでしょう。

答えは一つではありません。建設地の気象条件、敷地条件、家族構成、暖房方法、暑がり寒がり、などから総合的に判断するしかありません。

Ua値と工事費の関係

断熱性能を上げると工事費はどのくらい上がるのか?

高断熱のHEAT20G3仕様に興味あるけど、いったいどのくらい工事費が上がるのか、断熱性能を決定するうえでとても大切な情報ですよね。今回、G2~G3まで6段階の断熱性能別の工事費を試算しました。どのような断熱構成で計算したのか、設定条件が大切です。

Ua値0.28はG3じゃないよね?と疑問を持つ方はよく勉強されてます。HEAT20で示されている基準Ua値は地域区分ごとの代表都市で試算したもので、実際には建設地ごとに地域補正が必要です。0.28は東京や横浜など6地域のなかでも比較的温暖な場所であればG3性能を満たすのです。

まず共通仕様として外張りネオマフォーム厚45を設定してます。そのうえで性能別の断熱構成を下に記します。開口部は試験数値にて計算しています。

・Ua値0.46:充填断熱なし、アルミ樹脂複層アルゴンLow-E
・Ua値0.41:充填断熱なし、樹脂複層アルゴンLow-E
・Ua値0.38:高性能GW16K厚105充填、アルミ樹脂複層アルゴンLow-E
・Ua値0.32:高性能GW16K厚105充填、樹脂複層アルゴンLow-E
・Ua値0.30:高性能GW16K厚105充填、樹脂3層ダブルLow-E
・Ua値0.28:高性能GW16K厚195充填、樹脂3層ダブルLow-E

試算によると、Ua値0.46→0.41→0.38→0.32、とここまでは上位の断熱性能とするための工事費は20万円UPという結果となりました。次にUa値0.32→0.30への向上は70万円UP、Ua値0.30→0.28への向上では70万円UP必要という結果となりました。Ua値0.02上げるために70万かかるということは費用対効果が悪いことが一目瞭然ですね。予算があれば上げた方がいいですが考えどころでしょう。

というか、私なら太陽光発電パネルを乗せます。

そのほうが投資効率も二酸化炭素削減効果も高いですから。120万円あれば3Kwの太陽光パネル乗せて、毎年8万円分の電気代削減したほうがいいと考えてしまいます。投資効率も二酸化炭素削減効果も4倍ですから。

以上、断熱性能と住環境性能(早朝の自然室温)、工事費の関係でした。仕様決めの参考にしてください。性能別の年間暖房費をシミュレーションしましたらまたこのブログでお知らせします!

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