25の指針「空間の造形」

調和的なプロポーションと形態に注意をはらう

森の中にはわくわくするような変化があります。同じ樹木は一本もありません。幹の太さ、樹皮の色、枝ぶり、葉の形、すべてが異なっています。しかしこの多様性(全体効果)のなかに同一の基本的な秩序があるため、私たちはそこに調和を感じるのです。自然や音楽の調和を支えているのはリズムや比率(プロポーション)です。かつて日本にあった調和のとれた民家の風景と現在の東京の無秩序な風景はまったく違います。一つの建物は町や村の一部であることを忘れずに。

自然に近い光のバランスと色に注意し、点滅のない照明を用いる

省エネが求められているにも関わらず、全く陽が射さない住まいは多く存在し、人工光の過剰な洪水に人々はストレスを受けています。自然光を室内に導きいれることを考えましょう。外の自然がもたらす色彩をよく見て住まいの色彩を考えましょう。色彩は心理的にも作用し、例えば同じ19度の室温の部屋でも、部屋の色が赤ければ多くの人は暖かく感じ、青ければ多くの人が寒く感じます。照明も自然光に近いスペクトルの製品を選定すべきです。

見る・聞く・嗅ぐ・触れるなど感覚知覚がもたらす印象を支援する

人間による手仕事と、機械による仕事とでは、潜在的な意識に訴える力が違います。例えばクレーンを使って鉄骨を積み上げた建築は、人間の力をはるかに超えた次元の仕事です。構法そのものは大変興味深いものですが、それと私たちが親和するかということとは全く別の話です。自然界に直線は存在せず、獣道は必ず曲がりくねった道となることを知っているにもかかわらず、なぜ住宅は直線・平面で構成されるのか。近くのもの、触れるものほど感覚知覚がもたらす印象をを大切に。

生理学的、人間工学的な認識に配慮したインテリアと家具を提案する

東京都だけでも毎年7万人以上の方々が事故や怪我で救急搬送されています。また健康に見えても肩・ひざ・腰などに痛みを感じている人が多いです。解剖学的にも、機能的にも誤った、体に合っていない椅子・テーブル・ベッド・作業機器・家事道具が身の回りにあふれています。居住生理学的な認識をもって、住居・学校・仕事場・病院・などといった、それぞれの場に相応しい造形と仕上げをもった製品の引き合いが今後高まることでしょう。

地域の建築的伝統や手仕事の技に敬意を払い、支援する

「バウビオロギー」とは何ですか?という問いに一言で答えるとしたら「伝統的な民家」ということになります。しかし、単に民家をコピーすればいいということではありません。今日の知識や技術に基づいてこれら民家をベースに新しいものを生み出していく、ということです。民家にはその前提的な意味合いが含まれているのです。新築なのにずっと前からそこにあったような家、100年後も残る家となるよう考えましょう。

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