熱貫流率U値と表面温度の関係

 

温暖化防止、CO2削減、持続可能な社会形成という全世界共通の要請、住宅の快適性と健康性の向上から、国土交通省の方針として高断熱住宅化が進んでします。高断熱住宅という言葉はよく聞くけれど、高断熱とは具体的にどの程度の性能なのか、住宅を建設あるいはリフォームする際に我が家はどの程度の断熱性能を目指せばよいのか、と疑問に感じておられる方が多い事でしょう。

 

断熱性能はU値(熱貫流率)で示すことができます。現在の省エネ基準では、床・外壁・屋根(または天井)・窓の断熱性能を平均化したUa値(外皮平均熱貫流率)の基準値が地域区分ごとに決まっています。金に糸目は付けないのであればHEAT20のG3基準以上のもう一段階上のレベルまで上げてください、という答えをしますが現実はそんなに単純ではありません。外皮性能だけで快適性や省エネ性が決まるのであればいいのですが、実際は「周壁表面温度」、「湿度」、「周壁の調湿性能」、「接触面からの熱伝導」、「気流」、「着衣量」、「運動量」、「イニシャルコスト」、「光熱費」、「撤去処分時の二酸化炭素排出量」など様々な要素がからみあって決まります。

 

なんだか余計分かりにくくなりましたね。

どこまで断熱性能を上げればよいか?という疑問に対して一つの判断基準をお示しします。バウビオロギーで語られる事柄にはすべてエビデンス(証拠)があります。建築物理の方程式や研究資料などのエビデンスから答えが示されていおり、U値(熱貫流率)と室内表面温度の関係式も明記されています。ここに掲載した表と折れ線グラフは、その計算式を用いてU値(熱貫流率)と表面温度の関係を日本の断熱等級別に算出した結果です。室内温度20度、外気温は5度、内外温度差15度の条件で計算しています。

 

・断熱等級4(次世代省エネ基準)Ua値0.87のとき内壁表面温度は18.30度

・断熱等級5よりも少し高いG1基準のUa値0.56のとき表面温度は18.91度

・断熱等級7(HEAT20 G3基準のUa値0.26のとき内壁表面温度は19.49度

 

私は計算した数値が正しいのか常に疑問を持ち、完成後の住宅に温湿度データロガーを設置し、表面温度測定などしています。実測結果は上記計算数値よりも高いです。計算数値のU値は床壁天井窓の平均値で、例えば平均U値0.46とするためには0.4を下回る壁U値が必要、平均U値0.26とするためには0.2を下回る壁値が必要なので当然です。

等級4からG1基準に上げたときの表面温度差は0.61度、このときの体感温度差は0.30度になります。体感温度は「(室温+周壁表面温度)÷2」ですので表面温度の半分となるのです。

次にG1基準からG3基準に上げた時の表面温度差は0.58度、このときの体感温度差は0.29度になります。

 

両者の温度差はほぼ同じなので断熱性能を上げた時の効果が同じということが分かります。では断熱性能を上げるための工事費増は如何ほどかといいますと、ざっくりした金額ですが、前者は40万円、後者は120万円です。前者は40万円で体感温度0.3度向上という効果を得て、後者は120万円で体感温度0.29度の効果を得た、工事費増は3倍なのに効果は同じということが分かりますね。費用対効果、コストパフォーマンスは約1/3ということ。

 

では断熱性能を上げたことによる冷暖房費削減で120万円を回収するのに何年かかるのかを検証してみましょう。G1レベルの年間冷暖房費は現在(2022年)の電気量単価で計算計算して、6万円(全館冷暖房)です。それに対してG3レベルの年間冷暖房費は3万円(全館冷暖房)です。その差3万円ですからイニシャルコスト増120万円を回収するには40年かかる計算になります。今後さらに電気代が上がるかもしれない、120万円のコスト増分を金利分は考慮していないという不確定要素はありますが投資と考えると話になりません。同じ120万円かけるなら3kWの太陽光パネルを設置したほうが投資効率は2倍、二酸化炭素削減量は1/2になります。

 

「快適性」、「健康性」、「省エネ性」、「経済性」から考えた現在最もバランスのよい断熱性能はどこなのか?

 

あくまで超個人的な意見ですが、快適性・健康性・省エネ性・経済性トータルで考えて、それば「HEAT20 G2基準」です。数年前、ほんの5年前のベストバランスは「G1基準」でしたが趣旨サッシの高性能化と価格低下により現在のベストバランスは「G2基準」だと思います。このように費用対効果は年々変わります。高断熱化がさらに進み断熱材や窓サッシなどの資材単価が下がっていくと、20年後のベストバランスは「G3基準」となっているかもしれません。

 

ベストバランスと簡単に言っていますが、日射利用や通風利用可能な立地なのか、住人は窓の開け閉めなど工夫して住んでくれる人か、窓を閉め切った状態で暮らしたいのか、予算の有る無しなど、条件によってもベストバランスは変わります。絶対解はないので案件ごとにベストバランスを探していかなくてはいけません。

下の関連記事では、U値0.2~0.3~0.4~0.5へと変化させた場合の熱損失量から、ひと冬の暖房費を計算しています。こちらの記事も参考にベストバランスを探してみてはいかがでしょうか。

blog category
バウビオロギー住環境
感共ラボの森をフォローする
一級設計事務所 感共ラボの森

コメント

タイトルとURLをコピーしました