調湿性能をもった材料を用いるー建材の選択ーバウビオロギー25の指針

調湿性能をもった材料を用いるー建材の選択ーバウビオロギー25の指針

ー調湿効果ー

室内環境にとっては、調湿性のある材で構成された面が空間内に十分に確保されていることが重要です。吸湿性のある材は、バランスのとれた空気湿度をもたらして湿度の変動を抑えます。さらに、調湿性のある材は水蒸気を拘束し、窓やドアの開閉などによる換気の際に水蒸気が失われることを防ぎ空気湿度のレベルを上げる効果ももたらします。つまり、多湿時と乾燥時のどちらにも効果があるのです。

水分を吸収することのできない材料が用いられていれば、相対湿度はすぐに上昇し、表面は濡れたままです、それによってカビの発生リスクが高まります。逆にもっぱら吸湿性のある材料が用いられていれば、状況は全く異なります。相対湿度が上昇すれば、その大部分は吸収され、加えて表面はすぐに乾きます。相対湿度が下がれば、材料のなかに蓄えられていた水分はゆっくりと室内空気へ放出され、空気が乾いている、と認識されることが少なくなるのです。

湿度の高い夏場、水分を吸収した調湿材料から気化する際の気化熱は周囲の温度を下げると共に壁面温度も下がります。この効果により室内に居る人の体感温度は、調湿性能のない仕上げ材の部屋と比べて私の個人的な感覚ですが2度ほど涼しく感じます。調湿性能の高い自然素材で仕上げられた部屋に訪問したお客様から、冷房稼働していないにもかかわらず「涼しいけど冷房しているの?」と聞かれることがよくあります。

 

ー様々な材の含水率ー

調湿建材の含水率は空気の相対湿度と気温に関連していて、どの建材も一定の平衡含水率を持ち、飽和点まで湿気を吸収し、相対湿度が下がれば平行含水率まで湿気を放出します。また建材の調湿性が屋内の空気湿度に大きく影響するのに対し、透湿性はほとんど影響を及ぼしません。

木材の含水率飽和点は約25%~30%(材種により異なる)です。つまり1m3の木材の場合、約150kgの水蒸気を吸収できます。木材は乾燥性にも優れているため、吸収された水分はすぐにふたたび空気中に放出されます。

屋内に空気湿度を短時間で調整するための決め手となるのは、部材表面2cm~3cmの層です。従って、塗り壁、化粧張り、床には特に注意が必要で、透湿性のない塗膜性の塗料で表面処理してしまうと調湿性が著しく損なわれるか、調湿ができなくなります。

気温23°C・相対湿度50%・厚さ2cm・1m2当たりの含水率(kg/m2)※()内は相対湿度80%
グラスウール・ロックウール:0.0024(0.003)
セルロースファイバー   :0.100(0.200)
コルクボード       :0.100(0.140)
木質軟質繊維版      :0.400(0.640)
石膏ボード        :0.090(0.180)
コンクリート       :0.440(0.720)
無垢材          :1.080(1.800)
石灰セメントモルタル   :1.800(2.880)

空気湿度が40%から80%に変化した場合、様々な材が3時間で吸収する水蒸気量を調べた結果から、住宅の室内環境はおおむねコントロールできます。特に、台所・洗濯室・洗面脱衣室など、空気湿度が頻繁に上昇する室では、結露や湿気による害の発生を防ぐために調湿性のある材を使うべきです。

 

BIJバウビオローゲ 森健一郎

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